材料がない


日本国内で剣道防具製造に従事する職人にとって絶対不可欠な素材が、
昨今の経済状況等により非常に入手困難な状態に陥り、
この状態がしばらく続けば日本国内製造が立ちゆかなくなります。
窮状を御理解いただき、何か良策をお教え頂ければと思います。

 見事に整頓された竹が並ぶ川端の竹屋風情
 この景色もいつまで----
 (文中の竹屋さんとは関係ありません)

革傷や穴により、1年間でこれだけ使えない物が出来る。
吟革の証拠、高級品の証、と重宝がられる欧米並みに、
せめて表面傷は認めてほしい物ですが----。

この後、手の内用や茶燻し革、紺革に加工する。
最下欄 参照ください。
先染め糸で織られた正藍染め小幅木綿。
右側反物の白色は縦糸に色を付けた織り長さの目安。
左側反物画像の白い色部分、耳糸経糸のみ白いので
いずれも糸染め〔先染め)木綿と証明される。
今や国内産は壊滅状態。

藍染め色も本物なのに色のクレ-ム。
右側の刺し地、赤いからインチキ商品と言われる。
繊維糸を燃やせば正藍染めかすぐ判るのに、
青いとか赤いとかで頭から無視、まるで受け付けられない。

正藍染めは「ジャパンブル-」と呼ばれ、
藍染め独特の色落ちが他の業種では珍重されるのに!



 まずは竹刀。京都丹波産真竹の竹材屋店主曰く、
良材を算出する竹山に最適な土地がどんどん宅地化され、 
次第に日当たりの悪い土地に追いやられ、山の手入れも不足しがちで、
良材を算出する竹山も最早廃山目前。
良質竹材の確保が難しく、極めつけは地球温暖化。

 かつては根本から枝先まで需要があった竹材も現在ではごく1部分の需要のみで、
しかも厚みや竹表面の顔、傷等細かい部分迄指定があり、
余った部分の廃棄によるコストの高騰や人手不足、
安価な外国産に引きずられての販売価格の極端な下落、
その上国産竹材の良さも判ってもらえず、このような状態での経営継続はもう無理、
損害を此以上出さない様一日でも早い廃業を考慮中、と話されていました。

 我が業界でも竹刀には重量や節、形、厚み、等各種の規格があり、
良質素材が何かを理解出来ている竹材屋も、
供給したくても竹刀適材が極端に不足と言う。

竹刀の強度を考慮し、真竹に対して孟宗竹で作る竹胴胴材も同様との事。 

 地球温暖化は他の防具素材にも影響を。
防具素材では特に皮革類、鹿革と牛革。 

 鹿革といえば日本では昔から奈良。
今は奈良産はおろか北海道産鹿革も繊維密度の荒さと傷で剣道具には使用出来ず、
やむ終えず外国産に頼るが、此も同様無傷の原皮素材は100%あり得ない。
尚難しいのが歩留まりの悪さで、仕入原皮の30%が剣道具に使えれば良い方。
西欧では「表面の傷こそ吟革の証」と喜ばれるのに
日本では少しの表面傷でも「駄目、使えない」との声が職人の間でも。 

 鹿革の副産物で甲手のクッション芯材として最適な中空の鹿毛。
元々は友禅筆材として有名。
友禅筆に向かない残りを剣道具に使用するが、
温暖化で北海道産鹿毛さえ使用可能かどうか?と言った所で、
鹿毛の手刈り職人も年間通しての仕事量が無く廃業間近と言う。

 筆と言えば家紋を描く「めんそう筆」。
その筆材は琵琶湖産こまネズミの毛。  
とうの昔に皆無。今や在庫品筆のみで、使い切れば、と行く末も案じられる始末。

 手揉み黒桟革専業も今や日本では中村高明1軒のみ。
その素材の「姫路播但鞣し」職人、これも今の所只一人。
高齢で鞣し革製作の今後は?と、かの中村高明の弁。
同様歩留まりの悪さに悲鳴。

 繊維では小幅木綿は壊滅的で、「端」耳の利用法を後生に伝えようにもこの先は。 
 剣道具用専門糸屋も国内わずか2軒のみで、
様々な色や太さ撚り糸を求めても、最早供給不可能に近く、
生産量が少量のため作る見通しも立たないと言う。 


 琵琶湖産ネズミどころか実生活においてでも他人事ではない。
最近は温暖化と人手による環境破壊が問題になっている。
 アメリカで最近話題になっているのが働き蜂が突然巣箱から消えてしまう事。
大量の死骸が見つかった訳でもないと言う。
残ったのは女王蜂と幼虫、結局巣は潰れしまう。 
原因は一つに蜂蜜を作らせるより受粉を中心にさせた事。 
蜂蜜を作るよりお金になる。

 たとえばカリホルニアのア-モンド畑。  総面積3000㎢。 
彼の地には見渡す限りア-モンドの木しか見えず、他の草木は1本もない。 
勿論他の虫も鳥さえ見受けられない。 
当然受粉はミツバチに頼るしかなく、
此は自然の世界では全く異様としか言いようが無い。、

 一方ミツバチはア-モンドからしか栄養を摂取できず、
人間に当てはめて考えてみても、
いくら好物でもそれしか摂取できないとなればどうなるか? 
生活が可能かどうか即判るはず。
 
そしてそのストレスと農薬汚染。
障害がでるのも極めて当然。

最近 我々の社会でも虫や鳥が居なくなった。
春上空でさえずる雲雀の声など何年前に聞いたきりか。
あの大歌手「美空ひばり」の「ひばり」の意味を子供達に、
いや今の大人達にも教えないと理解できない時代になった。



昨今の剣道具は「価格」と「見た目」が中心で、
量販店や一部大メ-カ-が価格と企画をリ-ドして国内産が、
本物の防具が追いやられている。 
 
 有る道場の先生から聞いた話し。
新品の剣道具を親に買ってもらって入門してきた子供に
「良い剣道具を買ってもらって良かったね。
でも稽古では使わないようにね。」 と。

 確かに見た目も重要です。
武士は戦場に向かうのに死を覚悟して臨み、
死した後にでも無様な死に様を見せず、
恥をさらす事の無いよう最高の「鎧、甲」を身に纏い、
薄化粧までして戦場に臨んだと言います。 

 防具も着用した際の立ち姿の美しさ、それも良い防具の1要素です。
良い防具は遣い易いし美しい。
動きの中でも美しさが失われない。

 我々は「防具は鎧、甲」との認識を持っています。
今の剣士にとって主戦場は日本選手権と昇段審査との思いで、
その戦場へ向かう剣士にお使い頂けるよう日々切磋琢磨して技術を磨き、
「あの防具は良かった」との1言を頂けるよう目指しています。

 その「良い防具作り」には、各々の防具部品の意味や働きを理解する事が重要です。
それには作るには良い材料が必要です。
中には新素材で優れた性能を発揮する物もありますが、
基礎となる手本となる素材と使いこなす技術が国内に必要です。

 竹刀から始まり胴も胸も面も垂れ甲手も衣類関係に至るまで、
すべてに相互間に関連がある剣道具の世界、何一つ欠けても成り立ちません。 
我々はこの現状にどう対応すべきかは判りませんが、防具作りの近い将来に非常に危機感を抱いています。 

 本物を作る「職人」の手作りはもはや無用の時代になったかもしれませんが、
何卒防具の為に、日本の剣道具の為に、
最小限の技術保存と基礎素材確保にお力添えとご指導を剣士の皆様にお願い申し上げたく思います。
 


藍染め鹿革の製作工程を皆様にご覧いただきます。    このように多くの人手と天候を見ながらの作業です。  このうち何%使えるか?

鹿革表面を焼く鏝を加熱している 革を台上に張り、表面を鏝で焼く
焼いた表面を包丁で削り整える さらに軽石で表面をなめらかに仕上げる
藍瓶の手入れ。  左側に焼き鏝仕上げして藍染めをする革が見える 瓶の藍染料の中に付け染色する
一度で染まらないので複数回藍瓶の中へ 天日乾燥の為、染色日も左右される。

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