仕事場訪問



「中村高明」さんの場合 

多くのお店やカタログで、「本刺し」とか「本黒桟」という文字や言葉が聞かれますが、
そもそも「本刺し」とか「本黒桟」とは何を指すのかご存じですか?
それが本物の刺しとか、本物の黒桟という意味で使われているのなら、
「偽刺し」、「偽黒桟」があるのでしょうか?
何に対しての本刺し、本黒桟なのでしょうか?

今回はその中の「黒桟」について考えてみました。


胸に使用してあるシボ(皺)のある革をさして本黒桟と言っていると思いますが、
「本黒桟」と言っているお店の何軒が正しく正確な黒桟の意味を知っているのでしょうか?
胸を見ただけで幾種類もの革質を見分けることが出来るのでしょうか?
往々にして能書きの多い店ほど怪しい物です。

そして、昨今のえせ職人の多いこと。 


今現在、日本国内で剣道用手揉み黒桟を作ることが出来る本物の職人はたった2人。
今回は、そうした人目に触れず、宣伝もせず(する甲斐がないのか、出来ないのか)、
縁の下の力持ちの役割を果たす本物の革職人の一人、中村高明氏の紹介です。
 (かくいう私も彼の黒桟に多大にお世話になっています。)


手でする職人仕事をいくら説明しても理解されませんから、詳しくは剣道日本誌に任せるとして、
彼の奥ゆかしさと生き方に日本人のルーツと本質を感じます。

我々職人はただ単に彼の手による材料を使わせてもらうだけでなく、
彼の心を理解し、それを製品に反映させうる義務があると思います。

この失われつつある名品、名素材が、革質を知らない作り手による間違った遣われ方をされたとき、
本物の手揉み黒桟を作る職人に顔向けできますか?

そうした作品(胸)をみたとき、怒りを通り越して言いしれぬ悲しみさえ覚えます。
(他人を批判するかく言う私も、えせ職人の一人かも知れません。)



「今の職人でもいい仕事ができるね。しているね。」

彼にそう言わせてみたいと思います。

  燻し行程中の中村会員。


  藁を使って煙で革をいぶす。

  鹿革でも同じ行程を施すが、
  昨今は塗料を吹き付けたイミテ−ション「燻し革」が多く、
  臭いが無い  のと、色斑がないとの理由で
  その方が高級と説明しているお店があった。

  専門店の先も見えた思いで情けない。


  渋(タンニン質)を塗った革に、
  鉄分(お歯黒)を刷毛にて塗布しているところ。
  漆を塗っているところ。



  彼の充実した顔。
  職人の一番充実した誇らしいとき。

  いつまでもこうした作業ができる環境を護らなくては。