やぶにらみ見聞録

  職人の物差し  P-2      

 
 去る平成15年3月21日、日本経済新聞に北海学園教授、川端俊一郎先生の「法隆寺のモノサシ」という記事が掲載されました。  
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 文中、「奈良法隆寺」は、薬師寺や唐招提寺に使われた物差しとは全く違った独特の物差しを使った建築様式が採用されたとあり、先人から受け継いだ我々剣道具職人独自のモノサシも合理性があるのではないかとの認識を新たにしました。

 同時に剣道具のモノサシの持つ役割を剣士の皆様に理解頂き、最近問い合わせの多い「サイズ」の判断材料のお役に立てばと思います。
 

 先生の書かれた中に「建物の大きさによってモノサシが違う」という部分があります。
 基準とした木材は「通し肘木」 基準値は「1材」
 建造物の大きさによって基準となる木材の大きさが違い、「1材」の長さも9寸から7寸5分まで違いがあるという。

 我々が防具に基準とするモノサシは「手」。おおむね成人男子の手のサイズは7寸とされ、
その手から割り出したのが標準値「7寸」。

 その他 指の太さにより、体型の痩せ具合、太り具合が判りますが、その計算式はのちほど。
これが先生の言われるモノサシ、防具の「1材」に当たるのかなと−−−−

 (昔は剣道はおもに男性のする物とされ、女性は薙刀を、とされていましたから、女性剣士には申し訳ないのですが、この場合は男性を対象にしています。)

 
今も剣道具を作る際は、男性用も女性用も手のサイズを基準にする事に相違ありません
 
 

例えば胴台の上部分の水平長さの基準値、そして高さの基準値で、双方7寸。
(写真の横の部分、湾曲により2,3分小さく見えます。)

又顔の長さ、髪の毛の生え際から顎まで、すなわち面金の内径の高さと。

これが面布団の幅の基準値となり、甲手布団幅も7寸。 その5倍分が面布団長の基準値でした。 
 (旧陸軍用達防具)

時とともに流行があり多少の変化がありますが、おおむねこれが基準です。

この先生の「1材」を良く理解すれば、今後の防具作りに大変参考になると思います。


大きな体の剣士へのサイズの取り方、バランス、そして対応の仕方、少年用の小ささの基準の出し方、等々。
まさに我々の作るところの防具でも、先生のお考えの1材が存在するのではないでしょうか?

本来剣道具は、一人一人の体の大きさによりサイズを考えねば成りませんが、全部が全部1から製造したのではコストがかさみます。

この様な「材」「職人のモノサシ」の考え方が理解出来ていれば量産品防具に対しての加工変更や対応も十分に可能であり、必須ポイントをしっかりと掴み、その許容範囲(その1の箸の例参照)も考慮し、剣士の皆様に十分な対応が出来るはずです。

そうした時代時代と個人個人の体型の変化に対応し、守らなければならないポイントを崩さず、加工、調整出来る技術、
そして安全な防具を供給する技、  これこそが剣道具職人の本当の技とおもいます。


 



右画像、左の物差しが曲尺、右が鯨尺、一尺。     曲尺の一尺は鯨尺の八寸、 
(左の赤米印と右の八寸との対比がよくわかります)


 曲尺は道具類のモノサシとして使われ、 右の鯨尺が衣類、剣道衣、袴、のサイズのモノサシとして使われています。
 
たとえば、袴の二五号は鯨尺の紐下二五尺の長さ(94.5cm)を表しています。


 今回の記事(剣道具類)は左の道具類のモノサシ、曲尺を使用した物です。      この違いを記憶下さい。