やぶにらみ見聞録


  皮か革か? (革を作る)    

   中村会員 と 辻本会員
 皮革は人類始まって以来、衣類、住まいの部品、容器、履き物、の材料に!と言った使われ方をしていました。
 それは主に獣皮を意味し、皮革の原点(原皮)と考えます。 

 今現在剣道具で使う物は、アメリカや中国などの天然産と、ニュ−ジランド産等の飼育して育てた物があり、 そうした原皮を加工して商品化できるような素材になった段階で皮から革に変化したと判断しています。
以上の理由にて職人会は「革」の文字を使うことが正しいと考えます。
 剣士の皆様も正しい文字、言葉、部品名、を考えて頂き、日本文化とも言える剣道具にご理解を頂きたいと思います。

まず鹿革  

「鹿に拘る」を参照ください  

 鹿革は同じ動物皮の中でも最も細い繊維束の部類で、その繊維素1本1本の細さは直径が15オングストロ−ム、
(1千万分の15ミリ)という極細のコラ-ゲン繊維が何百本と集合し、無限の長さと立体交差で皮の組織を構成しています。
これは剣道具には相性の良い親水性と相まって合成品にはまねの出来ない剣道具材料として使われています。

 クラリ−ノ、やエクセ−ヌ等の名前で知られる日本で開発された合成品もなかなか優秀で、繊維の直径も0.002ミリと言った世界でも最も細い繊維であり、これは150kmの長さで重量がわずか1g、称賛に値する重さです。
 開発が進んで更なる極細繊維が開発されているかもしれませんが、今の段階ではまだまだ鹿革の繊維の細さには太刀打ち出来ません。 加えて親水性とともにその保湿性(なじみの良さ)故、剣道具職人は鹿革に固執するのです。

 そのしっとり感を大切にする為、特に甲手の手の内には最大限の注意を払います。
できあがった鹿革をさらに手に馴染むよう揉み加工をします。
柔らかさと素手感覚に近い薄さとそして丈夫さ、この相反する要求に対しての対応。

これこそが日本の職人の求める道、どうぞご理解下さい。
揉み加工行程を下の職人マ−クからご覧下さい。  合成品があのような鞣し行程に耐えられるかどうかで判断ください。

  鞣し作業中の中村会員をご覧ください

その後、紺革を作るための作業に入る。  以下参考画像
鹿革表面を焼く鏝を加熱している  革を台上に張り、表面を鏝で焼く 
 焼いた表面を包丁で削り整える さらに軽石で表面をなめらかに仕上げる 
藍瓶の手入れ。左側に焼き鏝仕上げして藍染めをする革が見える  瓶の藍染料の中に付け染色する 
 
一度で染まらないので複数回藍瓶の中へ  天日乾燥の為、染色日も左右される 

 
次に牛革の手揉み黒桟革。



原皮を川漬けと言って姫路市内を流れる市川という河川に浸し、塩と菜種油で揉み上げ仕上げした姫路白鞣革と言われる世界的にも異色な伝統技術の、俗に言う和鞣し革をお歯黒にて黒く染めた後、(船)という道具を使って、(しぼ)と言われる一種の「皺」を革を揉みほぐして作ります。
全体を均一にしぼを作るには力のいる根気のいる作業です。              作業中の中村会員  
全体に(しぼ)が行き渡ったら漆を塗って仕上げます。                  

  これが手揉み黒桟

 しぼのふくれたあがった部分に漆がのり、独特の凹凸と光が出ます。
 

 
 世界でこの革を造れるのは彼一人
 本当はギネスブック物なのだが−−−−



 この革で胸を造ります
 
  職人会の会員は基本的に剣道具製造業者(加工)を主体とする団体です。 その内皮革業を営む剣道具職人会会員の手によって昔からの武道具材料としての伝統を護り、鞣し加工を行い、藍染めや燻し加工、漆仕上げ等を行っております。

 革を詳しく説明すると、一冊の本になるくらい革は昔から人間には深く関わっており、
残念ながら我々は革の全体像を此処で語るに至るまでの十分の知識も持ち合わせておらず、
出口公長氏の文献等を参考にさせて頂きました。