剣道具職人会発足10年を期して思う

                             平成19年10月30日


 柔道が日本のお家芸であったのが、昨今は日本柔道の衰退が言われています。
その要素の一つに、柔道衣ではなく、柔道ユニフオ−ムと言われるのが原因の一つに思われます。
私は[柔道ユニフオ−ム」ではなく「柔道衣」と思いますが剣士の皆様は如何思われますか?

 着物から始まった柔道衣、丈があって裄、袖、帯、と全部が日本の伝統で文化でもある。
 構造的にも力の掛かる方向に刺し子を施して布地を補強してある。  刺し子は日本独特の文化である。
それが最近では袖幅や長さが極端に狭い、短い、傾向になっている。
のみならず奥襟まで幅を広くし、芯材を多く入れて分厚くして手で奥襟部を掴み にくくしています。
 
 袖や襟のつかみ合いや組み手争いで時間が経過する柔道で、柔よく剛を制する柔道が成り立つのでしょうか?
握力のある人、力のある人しか襟や袖、を握ることが出来ない。それが本物の柔道な のでしょうか?。 

 先の世界柔道大会での日本選手の敗戦が報じられています。
私は柔道も剣道も実技や試合のことは判りませんが、
「有効、や技あり」などの判定では、技をかけたタイミングで、先にかけた技が有効か? 
仕掛けられて死に体になった後からかけた技が有効か?、が問題になっているようです。 

これに対して日本柔道陣は、対策として今後は完全に最後まで気を抜かず技をかけ、完璧に仕留めると言っておられます。

 確かに技をかけた後の返し技に負けたかもしれませんが、
勝負のあった相手を更にたたきのめす、徹底的にとどめを刺す、のを求める今後の柔道には、
私の素人目にはこういった行為を潔しとしない心、日本の負けた相手を敬う武士道の欠如を感じますが−−−−。

もはや今は「柔道」を脱して 世界の「JUDO」になったのでしょう。
私は古 いのでしょうか?。  現代にマッチしていないのでしょうか?

私は柔道界を批判しているのではありません。

営業も大切ですがミズノのようなスポーツメーカーに少しはこの事を理解して頂きたく 思います。
そして基礎的な柔道衣の復活を、伝統を、我が武道具業界の早川さん、磯さんに 世界に伝えるべく頑張って頂きたい。


これは剣道具職人の勝手な独り言です。
どうか柔道界の皆様、ご容赦下さい。



一剣道具職人にとっては適わぬ事かもしれませんが、せめて剣道はこうした些細な事から伝統を守りたいと思っています。

何が出来るか? どのように守るのか、と言われれば答えは出ませんが
「剣道の活人剣」を大切にしたい。 武士道を研究したいと思っています。
 
 京都から始まる世界大会参加の外国人選手に剣道をする理由を尋ねたら、
剣道の勝 ち負け以前に相手に礼を尽くす精神を研究するため、
勝負にこだわらず、武士道を追求 する精神、神髄を学びに来た
」との答えが返ってきました。
 
 宗教に頼らなくても立派な人間的社会が構成出来、お互いを敬う、
礼儀正しく生活できる日本人の本質がそこに見えたようで、
それを理解するため勉強に来た。
とも言われました。
 
 イギリスの世界大会では、エリザベス女王を案内されておられたイギリス剣道連盟会長が、
わざわざ別会場の片隅で作業中の我々メンテ要員の元迄お出かけ下さり、
正座で両手をついて感謝されました。
 
日本人より礼儀正しい外国人に、日本人が忘れた、失った何かを感じました。

 伝統的な日本剣道の中に見受けられる 勝ち負けより優先する物は何でしょうか?
 彼らにはその入り口が見えています。そしてその奥を探求するため剣道を習うのだそ うです
 外国人の彼らに見えていて我々に見えない物、それは何でしょうか?


最近の世界剣道大会で日本が敗北を喫した。
その原因の一部がここにもありそうに思いますが如何でしょうか?

そうした中でとりあえず自分自身が、剣道職人会が出来る事は何であろうと思い、
まず第一歩が剣道具、正しい防具をみんなで研究、追求し剣士の皆様にご理解いただくこと事、
それが今後の行くべき道、目指すべき道の一つと考えます。

 防具とはなんぞや? 剣道具ではなく、「防具」であるとの認識を持つ。 
まず第一に良い剣道防具とは何かを知らねばなりません。

 我々の製造する剣道防具は、通常の物を作って終わりの業界ではない事を認識。
剣道具で良いのであれば使って終わり、使いやすくて終わりで良い。
ところが剣道防具は違うと言うこと。 使いやすく美しく、丈夫で、伝統に則り、
尚かつ身を、体を守る物でなくてはならない、安全第一と言う事が要求されます。


防具産業は総合的な物作り産業である。

 剣道は実に多くの部品や道具を使用してのスポ −ツであると言うこと。 
その1つ1つが高度な技術と安全性、使い易さ等を要求され、 相互にそのレベルが相手の防具に干渉する事。
一つの低レベル商品によりすべての対する剣道具がその低レベルに合わさって、レベル ダウンされてしまうと言う事、
を防具職人は知ることが、認識することが大切に思います。

まず竹刀の強度を知る。
竹刀の打突強度に耐える面金、顎、面布団。 そして竹刀の打突挿入角度、強度を知 って針金の曲がり角度や太さ、を考え面金を作る、
そして面を仕立てる。 (面金業者の特徴、特質などを知り個人個人の体型に合わせたものつくり。)
突きに耐える胸作り、革遣い、胴台の構成、竹胴の強度や設計。
甲手は竹刀の握りやすさや遣い癖、布団の厚みや芯遣い構成。
剣道衣類も同様で、後ろにも素早く下がることの出来る袴、すそ幅。
竹刀を使いやすい剣道衣、甲手が使いやすい、動きやすい袖丈や幅、丈、
そして紐の掛かる襟繰り、袖くり。

数え上げればきりがありませんが、すべてがそろって美しい正しい剣道が存在します。
 
その為の手段として、正しい文字、漢字意味働きを理解して頂きたい。
突き垂れ」と同時に「」であるとの認識。「小手」と「甲手」の同義語である説明と文字を継承する。 
蜀紅、浅葱、火打ち、乳革、頬輪に始まり、文字、言葉の中にその働きがあると 言うことを。    
糸や革、芯材、と言った使用素材についても目を向けて頂きたい。
皮か革かに始まる正しい文字、言葉、の使い方。そしてふさわしい使用材料。
なぜ鹿革を剣道具に使うのか?  クラリーノ対鹿革の繊維素の細かさの比較  0.002*0.0000015の事実関係。
 
糸、布などの繊維類、刺し地の意味、糸の太さ、繊維の打ち込み(布地の厚みの単位)
糸の天然素材と合成繊維(人造繊維)の知識について
藍染めについて アルカリ成分の研究等々。

(最近は生デニムのジ−ンズが復活してきていますが、
茶褐色の藍染め液に浸したのち、 空気に触れ酸化させると深い青色になる。そして色落ち。
これは欠点でもあるがこれこそが藍独特の長所で、
色落ちしても日にさらされて退色することはなく、褪せることの ない藍をトル−ブル−といい、強い信念の人の意味がある。
 イッセイミヤケなどのフアッション界ではこの藍を個性として受け入れており、
当業界でも大いに宣伝したい物である。)

{只、何でもかんでも古い物が良いと言っている訳ではありません。
むしろ逆で、新しく ても良い物があればどんどん製造現場に持ち込んで採用したいと考えています。 
何故古い物が良いかを知って、どの点が優れているのか、何故使用するのかを研究して から。}

 最後に防具を構成する物、サイズの基準である物差し。

 今は面は顔周りに始まり、はちまき、面布 団幅、長さ、あげく仕組み後の顎綴じ口からの布団長さまで言われます。
その元となるのが手から始まる金尺。 道具は手で扱う物=金尺。着物は体に纏って動きやすくする物、歩く=足、鯨尺
顔サイズが小さいからと言って甲手や胴サイズが小さいとは限りません。
計って注文しても全く合わないといった例が多く見られます。
 どのように計れば満足した防具が提供できるか?

こういった物差しの有り様を小売り店全体にまで理解を広げ、剣道家や初心者にも覚えてもらって、
孫とでも対等にスポ−ツが出来る唯一のスポーツ、生涯剣道を楽しんでいただける事こそ我々の目指す道と考えます。


最近の剣道具はこの点を忘れている事実。 

価格競争ばかり重点に追求され、極論すると防具ではない。
昨今の剣道具は誠に目に余るお粗末な物があり、正に悪貨が良貨を駆逐するが如しである。
 
今や剣道具に始まり袴、剣道着、竹刀にと、果ては竹刀付属品や紐類、に至りとどまる ところを知らずと行った有様。
 
顔の入らない被れない面(右側面、左側を比べてください上への盛り上がりが違う、
芯材が お粗末で少しの使用期間ですぐに薄くなる面布団、 ほどける紐、
表面が剥がれる素材のお粗末甲手、 
軽さだけ詠った安全性を置き去りした打たれて痛い「軽量剣道具」。
高段者と初心者の衝撃力を受ける度合い。上が高段者、下が中級者。
ピンポイントンの衝撃を受けるには?長時間の衝撃を受けるには?
それに止まらず竹刀が滑ってわざわざ喉元に向かうように作られた中央部分の盛り上がった顎、 
そして究極はわざわざ頸動脈に剣先が向かう反りのある竹刀。
反りの意味を知っての製作か?何故反りが必要か?説明を求めたい。
 2007年9月13日の日経新聞に「袋撓職人はロシア人」の記事が載り、専門職人として報道されています。 
我が業界の中には武道具、防具職人がいないのかとも問われている気がします


我々職人会こそが日本の武道具業界の本家製造元との誇りを持ち、
正しい防具の指標を示さないと使用者剣士の皆様に申し訳ない。  

多くの情報がインタ−ネット上に流されている昨今、間違った情報をあたかも専門家のごとく装う事実に、
今後は同業界として遠慮せず堂々と論陣を張り、「悪い物は悪い」と立証し、もの申す状態を構築したいと思います。

今後こうした事項を留意の上、職人会の活動を行ってゆきたい物です。
剣士の皆様もこうした方針をご理解下さり、職人会を応援下さい。

 
職人の半端談義にお付き合い下さり感謝します。


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